その人でなければ語るに値しない

読書:成功を決める「順序」の経営

経営関連のお話になると、よく話題に上る日本マクドナルドCEOの原田泳幸さん。知らないと会話が成り立たないので本を読んでみました。

彼の就任から5年間でのマクドナルド復活の秘訣と、経営のあり方について書かれた本です。

 

悲観的な社員が多数派だった中で、どのように短期間で復活に導いたのか

「ハンバーガーは飽きられてしまった」
「何をやってもムダだ」

マクドナルドは彼がCEOに就任するまで、24ヶ月連続で既存店売上高が前月比マイナスとなり、2期連続の最終赤字を出していたそうです。

 

「企業というものは「らしさ」を忘れて不振に陥り、「らしさ」を取り戻して復活する」

業績不振だったマクドナルドは、ハンバーガーの値段をコロコロと変えたり、猛烈な勢いで新規出店をするなど、既存店での失敗をカバーしようとしていました。

しかし、それが原因となり、「清潔でおいしい食事をスピーディーに提供する」というマクドナルドらしさを忘れてしまっていた。まず、本来のマクドナルド「らしさ」を立て直すよう努めた。

 

「コストカットをするな。もっとお金の使い方の提案を持ってこい」

売るための手法を考えずに、コストカットをすれば、自殺行為になる。(アイデアなくコストカットをするためには、血を吐くような思いをするか、手を抜くかしかないと私は思います。)
そうではなく、創業時よりも使えるお金が増えたのであれば、お金を使うアイデアこそが改革に必要である。

バブル崩壊後、多くの日本企業は人を減らし、新卒採用をストップした。だが、本来、あの時に重要だったのは、リストラではなく、以前よりも効率的で意味ある金の使い方を考えることでだったのである。

 

「大切なのはシークエンス」

土台がない所に柱は立たないし、柱がない所に壁は張れないように、ある戦術を実行するためには、その戦術が実行できるための環境を整える必要がある。

売上=顧客数×客単価であるが、この両方を上げるのは難しい。

客数を増やそうとすれば、値下げをすれば良いが、そうすると客単価が落ちる。逆に客単価をあげようとすれば、客数が落ちる。どちらも結局は元の売上と変わらない結果となってしまう。

この矛盾する中で、何をどのような順番でやっていき、売上と利益を上げるか。その順序=シークエンスこそが、戦術の中で最も重要な要素だ。

 

「どうやってワクワクさせるか、というサイコロジーと、理詰めで考えて、その驚きを含めた
顧客満足を利益に変えて行くサイエンスの両方が経営には必要」

マーケティングには、お客さんをあっと驚かせるような商品が必要である。
そして、マーケティングなしで利益を出すことができる商品も必要。

このどちらをどれだけ持つのか、というポートフォリオでマーケティングは考えるべきだ。

 

まとめ

デパートコスメ業界もこのようなマーケティング戦略を展開しており、昔から利益を上げているベストセラー商品もあれば、今までにない成分や効能を開発し、新しく有名な芸能人や女優を何人も起用してPRしてゆく新商品もある。

お客さんが何をなぜ買いたいのか、という心理を考える部分それを実現するための論理の両方が、利益を上げるためには必要。

 

大切なことは相反することだらけの中で、直感で決めて行くこと論理的に考えることの2つのバランスを取ること。ひとつの指針となるのが、自分ならどうするのかという「経営者目線」の軸と、成果を上げるための実行の「順序」を突き詰めて考えること。「順序」を論理的に考えるのってすごく難しい。

 

日本マクドナルド社の他にも、「らしさ」を失って失敗した企業もあって、「らしさ」を取り戻すことにより成功した企業もあるでしょう。

私は、成功には「まぐれ」や「たまたま」や「時代」があって、失敗にはそれらがないと思っているのだけど、原田氏の指揮は本物なのだろうなあと感じました。

先日編集者の方が「本を書くということは、その人でなければ語るに値しないことを書くのだ。」と言っていたけれど、確かにそうで、散りばめられた格言は当たり前のことを言っているけど、それが日本マクドナルドを立て直した彼が言うからこそ、聞く者がいて、響く者がいるのだ。

 

ところで、これからのイカスミマックはどうなっていくのでしょうか・・

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